6. パンやお菓子の基本材料について イースト
イースト
イーストは、パンを作るために必要なふくらみを生み出すために使われます。イーストは、酵母全体を指しますが、日本では、一般的にパンの製造に使われる工業製品を意味します。微生物の中で醗酵力の強いパンに適した酵母を選別して培養したものです。イーストの銘柄によって様々な特徴を持った製品があるので目的の製品にあったイーストを選ぶ必要が有ります。砂糖の量や醗酵方法などで適した性質のイーストを使います。
イーストの役割
- 酵素の働きによりパンを膨張させる。最も重要な役割
- 醗酵による味と香りを与える。パンの重要な要素
イーストの組織
イーストは植物で、 カビと同じ子のう菌類、 あるいは不完全菌類に属します。 形態的には5~7ミクロンと単細胞の微生物であり、1コのイースト(450 g)は約1兆1,664億の細胞からなっています。
成 分
水 分 65~69% 灰 分 1.7~2.0
タンパク 1 1.6~1 4.5 リン酸 0.6~6.7
イーストの製造
イーストは出芽によって増殖し数を増やしますが:
この増殖過程の条件や温度によって同じ菌からでも違う性質をもったものが生れます。
イーストは、からだの表面から糖などの栄養分を摂って生きています。周りに酸素があるときには呼吸をし、子孫を増やします。その繁殖方法は出芽と呼ばれるものです。 イーストは植物でありながら葉緑素を持たないため栄養分は、外部から直接吸収する必要があり炭素源としては廃糖蜜が使われチッ素源としてはリン酸アンモニウムが使われます。 これら無機物よりタンパク質を合成し成長します。 こうして増殖されたイースト液を脱水し整形包装し冷蔵(4℃前後) 後出荷されます。
イーストには糖分に対して強いものと弱いものがあり、一般に日本で使用されているものは耐糖性があり(菓子パン向き)アメリカ等で使用されているものは食パン等に適した耐糖性の低いものが使われているようです。
酵素 – エンチーム
酵素の構造は、ミネラルの周りにタンパク質が巻き付いたものです。様々な種類があります。酵素は、触媒として化学反応を引き起こしますが一つの種類で一つの作用しかしません。生物は、様々な酵素を体内に持っています。
二糖類(蔗糖しょとう、麦芽糖等)は、イーストの中の酵素(インベルターゼ、マルターゼ、)によって単糖類に変えられてからチマーゼによってアルコールと炭酸ガスに変えられます。でんぷんは、イーストの酵素で単糖類に変えられてからアルコールと炭酸ガスに変えられます。 これらのガスをパン生地が逃がさずに抱え込み組織が延びることでパンが膨らみます。
1. アミラーゼ(Amylase) — でんぷん分解酵素小麦粉に含まれる
アルファアミラーゼ(αamylase)、 ベータアミラーゼ(βamylase) などの総称、でん粉を加水分解してぶどう糖(単糖類)と麦芽糖(二糖類)およびオリゴ糖(少糖類)に変えます。 (ぶどう糖=グルコース=デキストロース)
2. インベルターゼ(Invertase) — イーストに含まれる
インベルターゼが蔗糖(Sucrose二糖類)を単糖のぶどう糖と果糖に変えます。
3. マルターゼ (Maltase) — イーストに含まれる
麦芽糖(マルトース)を2つのぶどう糖に変えます。
4. チマーゼ (Zymase) — イーストに含まれる
多くの酵素が集まった酵素群であり単糖類(ぶどう糖、果糖等)をアルコールと炭酸ガスに変えます。
5. プロテアーゼ(Protease) — タンバク質分解解素小麦粉に含まれる
タンパク質をアミノ酸に分解し、生地をソフトにし、グルテンを弱める作用をもっています。
イーストは、周りに酸素があるときには呼吸をし、増殖します。逆に周りの酸素が不足すると、増殖をやめ、糖をアルコールと炭酸ガスに分解して生命を維持します。この活動が、パン生地中での発酵作用です。 増殖・糖分解ともに、イーストが最も活発に活動する温度は30℃前後です。
イーストの保管
生イースト
- 1~3℃の冷蔵庫で保管する。
- 使用直前に冷蔵庫より取り出すのが望ましく、室温に放置しない。 (呼吸作用によりイーストの活生が弱る)
- イーストを冷凍しない。氷結晶により組纖が破壊されるので捨てる。 (もし冷凍した時は、ゆっくり温度を上げると使えることもある)
- 生イーストは、乾燥すると醗酵力が弱まります。必ず包装しておくこと。
- イーストは、35℃以上の水では溶かないこと。(60℃にて完全に死滅する)
ドライイースト
熱で乾燥した製品で開封後は、密閉して低温室もしくは、冷蔵庫で保管します。
ドライイーストは、水分が7~8%で乾燥に強い酵母を使っています。います。死滅酵母(グルタチオン)が多く含まれ、グルテン結合を弱めるので生地が伸びやすくなります。長時間醗酵するバケットなどに適しています。
一般には40~43℃の水にドライイーストを溶き10~20分予備発酵させてから使用します(砂糖を使用しますと溶解醗酵が早まります)生イーストに対するドライイーストの量は1/3~1/2です。
特 長
- 均一性; 生イーストのように移送や保存の影響を受けにくいのでいつでも均一な製品を得られます。
- 保存スペースを少なくできます。(約1~2年保存可能)
- ミキシング時間が、短かくなります。
インスタントイースト
顆粒状に乾燥させてあり予備発酵が不要で直接粉へ混ぜることができます。開封後は、密閉して低温室もしくは、冷蔵庫で保管します。生イーストに対して1/3の使用量です。(製造後1~2年保存可能)
イーストの膨張作用
- イーストはブドウ糖 (グルコース)、果糖 (フラクトース)、蔗糖 (シュークロース)、麦芽糖 (マルトース)を醗酵させますが、乳糖 (ラクトース)は醗酵されません。
- 醗酵過程では、二酸化炭素とエチルアルコールを生じますので生地のPHは下がります。
- 一次醗酵の主目的は、ホイロ(二次醗酵)で発生するガスを保持するのに適切なグルテンの状態にするためです。
- 醗酵に重要なことは、 イースト、砂糖、イーストフード、塩の量、温度、などです。
- イースト細胞は約63℃、胞子は68℃で死滅しめつし、パンの中心が焼成中約99℃になるとイーストは完全に破壊されます。
- 徴量のイースト細胞が醗酵の過程で再生されます。