9. パンやお菓子の基本材料について 油脂
油 脂
油脂の効果
油脂が入ることにより製品には、様々な変化が起こります。その効果は、
o 栄養化を高める
o 香り、風味を加える
o 生地をやわらかくする
o パンの物理的組織の発達を助ける (クラストを薄く、内層を均一に細かく)
o 生地の伸展性.ガス保持分を良くする
o スライス性を良くする
油脂の種類
水中油型(水の中に油が溶けている) 油中水型(油の中に水が溶けている)
水中油型: 牛乳、マヨネーズなど 油中水型: バター、マーガリンなど
天然の乳化剤としてマヨネーズなら卵黄のレシチン、バターなら牛乳の乳カゼインが作用する。
バター
バターは、最も人気のある油脂でバターの持つ風味は、油脂の中では最もすぐれています。 品質は、風味・硬さ・組織・色によって決められます。 バターの種類は、発酵させた醗酵バター・非醗酵バターに分けられますが、 日本では、一般的に非醗酵バターが作られています。
バターは、油中水型型で、約80~81%が乳脂、 14%が水分、 1~3%が塩、1~5%の空気が、製作工程でバターの中に混入しています。
バターのクリーミング性(空気抱き込み力)は、加工油脂に劣りますので、ケーキ等に用いた場合には、ボリュームは小さくなります。
マーガリン(植物油脂十動物油脂)
製パン性、味、香りともに良く広く使用されています。液体油脂に乳化剤を加え、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に水素添加して変えることで固体にする製造方法により作られます。人工的に作られたバターに似せた油脂ともいえます。
マーガリンは、バタ一的風味とショートニング的性格(ショートニング性・安定性・乳化性・分散性)を合わせ 持つており、その原料・配合・製法によって様々な性質の油脂が作られています。
口溶けの良いマーガリンは融点が、32℃以下で30℃の固体脂指数(SFI)3~5%のものが良く、結晶の大きさは小さい方が、口溶けが良くなります。
マーガリンは、日本農林規格で以下のように分類されています。
マーガリンのJAS分類
油 脂 % 水 分 %
強化油脂 80 16
A級 80 17
B級 75 22
ショートニング
食パンなどに最も一般的に使われており、水分を含まず又主に練り込み用油脂として使われますので、味、香りはほとんどなく水分も非常に少ない油脂で味や香りを付けずに油脂の力を利用できます。JAS:水分0.5%以下
材料により以下のような種類があります。
ラード、牛脂油、ステアリン(Stearin)と油(oil)を添加したラード、水素添加植物油脂
分類としては、植物・動物等の原料による分類と水素添加の製造方法による分け方があります。
水素添加とは、脂肪酸基にある不飽和脂肪酸の二重結合の部分へ水素添加して、飽和脂肪酸に変える反応で、飽和結合が増えると、融点が上昇し、ヨウ素価が減少します。(酸化しにくくなる) 目的としては、酸化安定性の向上と適度な硬さの油脂を得ることにあり、その量によって混合型ショートニング(部分添加)と全水素添加型ショートニング(完全胞和脂肪酸)に分けられます。水素添加することで油の劣化を遅くでき、乳化性が向上し水分の吸収量も増加します。
ラード (動物脂)
ショートニングに比べ、安定性に欠け、日持ちしないことと結晶が粗く、ショートニング性が劣る欠点があります。 ラードは豚脂から作られ主に脂肪酸の違いによって、ラード製品の違いが生じます。ラードには、純製ラードと調整ラードがあり、純製ラードは、精製(脱酸・脱色・脱臭)した豚脂のみを使用しています。調整ラードとは、精製をした豚脂に他の油脂を一部配合した後、急冷し練り合せてつくられた固形脂を指します。
製品ごとの油脂の役割
食パン、ロールパン
o 生地をやわらかくする
o ガス保持性の改善をする (グルテン膜を強く薄く)
o 生地をなめらかにする(ボリュームの向上)
4%の増加まではボリュームも増加する
ケーキ
o 砂糖と油脂がミキシングされ、空気をだきこむ(膨張性)
o ミキシング中に水を保持する(乳化性)
各油脂の乳化性(水分を保持する力)
保持できる水分量 %
ラード及び通常のショートニング 25~30
水素添加ショートニング 75~100
完全水素添加ショートニング 150~200
モノグリ又はダイグリセライドを含むショートニング 400
o バターは、香り風味は良いが、クリーミング性は劣る。
o 高配合のケーキには、高いクリーミング性のショートニングが必要です。
クッキー
o 膨張をコントロールするが、ケーキよりその役割が少ない。
o 安定性を与える
o ショートニング性与える(製品をもろく、くだけやすくする)
デニッシュ、パイ
o 水蒸気を遮蔽しゃへいして、製品に油脂層を与える
ロールイン油脂として、折りたたまれるので、その可塑性かそせいと融点が重要です。
ドーナッツ(フライ油として使われる)
フライ油は、発煙点と熱安定性が高く酸化しにくいものが良く、フライ油に適したものとしては、水素添加の綿実油かピーナッツ油があります。