7. パンやお菓子の基本材料について 砂糖の役割

砂糖

パンや菓子で甘さを付加するだけでなく、重要な役割を持っています。

1. 甘さを与える

甘さは、糖の種類により違います。又甘味の感じ方も違います。

甘味の時間と温度による変化

2. イーストに醗酵のためのエネルギーを与える

二糖類(蔗糖等)は、酵素や酸によって分解され単糖類に変わります。
蔗糖はミキシング後数分で全て果糖とブドウ糖に変えられますので、焼成品の中には蔗糖は残りません。ただし、二糖類の乳糖だけはイーストの中の酵素では分解できませんので醗酵しません。
イースト醗酵では、ブドウ糖、果糖、蔗糖と麦芽糖は、早く醗酵され二酸化炭素とアルコールを発生します。   醗酵の速さは、少ない量の糖の添加は醗酵を早めますが(4~8%)これを超えると醗酵スピードが遅くなるとともにイーストの活動が押えられます。
ブドウ糖と果糖が別々では、同じスピードで醗酵しますが、混ぜた状態では、果糖よりブドウ糖のほうが早く醗酵します。蔗糖100gからは、105.2gの醗酵する固形分が得られますが、果糖からは、91.5gしか得られません。
同量の使用でブドウ糖は、蔗糖の87%の醗酵力しか得られません。(蔗糖の方がガスが多く発生するのでふくらむ)

3. カラメル化によりクラストに色を与え香りを出す。

糖を高温で加熱すると、約160℃で溶け、酸化還元反応を起こし次第に褐色になり、独特の風味がつきます。カラメラル化は、pHによって違いが出ます。酸性条件のほうがスムーズに反応が進行します。 パンの場合、粉100%に対して約2%の砂糖が醗酵で使われ、それ以上の砂糖は残留糖として製品に残り味やカラメル化による焼色に使われます。(醗酵温度、時間により変わる)

褐変(カッペン)反応
ブドウ糖や果糖など(反応を起こしやすい還元基をもつ糖)は、卵や小麦粉などに含まれるタンパク質やアミノ酸(アミノ基をもつ)と一緒に熱を加えられたときにメラノイジンと呼ばれる物質を作りカラメルと似た色と香りを示します。 このブラウン反応と糖分のカラメル化は、パンやケーキに良い焼色をつけるための重要な反応です。

4. 生地の物理的性格を変える

砂糖は、でん粉や野菜ガムのゲル化をさまたげる働きをします。*ゲル化は、砂糖の存在により弱くソフトになる傾向があり、この砂糖の軟化作用により適量の使用ではパンの組纖、ボリューム、外形が良くなります。

*ゲル化
ゲルというのは、水を含んだような塊で流動性の無くなったもの、例えばゼリーやこんにゃく、固まった寒天などです。ゲルに対してゾルとは、溶液状のもので、例えば石けん水や牛乳、固まる前の寒天などがあります。

水分の保持が良くなる(日持ちの向上)
糖には吸湿性があるため、食品中に含まれる水分を吸い取ります。水分(自由水)は、糖と結びつき、結合水となります。食品の中の自由水が減ることで菌の増殖を抑え劣化を遅らせ、保存性を高めることができます(水分活性が低くなる)。糖度の高いほど日持ちします。
砂糖の吸湿性(水分を保持する力)は、転化糖、ハチ蜜、水あめ等の液状の糖類は強く、上白糖、グラニユ一糖、ブドウ糖などの結晶状のものは吸湿性が弱く吸湿性の高いものほど水分の蒸発が少なくなり、焼成品の中に残る水分も増えます。しっとりさせるには、液状の糖類を使うと効果的です。
でんぷんを使った食品の老化を防ぎ、やわらかく保ちます。

5. 泡立ちの安定

砂糖が卵白や生クリームに含まれている水分を吸収し保持するので、泡同士のくっつきを抑えてきめ細かい状態を保つことができます。砂糖は、泡を立ててから少しずつ入れます。   メレンゲ・ホイップクリーム・アイスクリーム・マシュマロなど

 

6. 熱凝固力減少

タンパク質の水分を吸収し、熱凝固(ギョウコ)性を改善します。砂糖を入れるほど凝固力が減少します。(固まる力)
プリンを作るとき砂糖を入れることで、卵や牛乳の固まる温度が高くなり、よりやわらかく、なめらかな仕上がりになります。

 

7. ゼリー化

ジャムでは、砂糖が、甘味だけでなく*ペクチンのゼリー化に酸とともに大きな役割を果たしています。砂糖が、ペクチンを編み目のようにつなぎ、その編み目の中に水を抱え込んでしまうことにより、ゼリー化を促進するからです。

*ペクチンは、植物の細胞壁の構成成分として、セルロース等他の成分と結合して、植物細胞をつなぎ合わせる「セメント」の働きをしている天然の多糖類です。

6. 結晶化

砂糖を煮詰めて溶かしたものを冷やすと再結晶化します。
フォンダン・金平糖・キャンディーなど

 

7. 酸化防止

砂糖が、水分と結びつくと*結合水ができ酸素が溶け込みにくくなり酸化防止に繋がります。油の中の水分とも結合し、酸素が溶け込みにくくなり、酸化しにくくなります。
クッキー・ケーキなど
*結合水は、くっついた状態で離れ離れにならない状態、自由水とは、水が他のものとくっつかずに水だけとして売る状態。